紹介状なしで大病院を受診すると7,000円?選定療養費を窓口の実際から解説

医療費・お金の制度

「紹介状をお持ちでないので、7,000円をご負担いただきます」

大学病院の外来で22年、この説明を何度もしてきました。そして正直に言うと、いちばん揉める説明でもありました。

この特別料金を選定療養費(せんていりょうようひ)といいます。

この記事では、金額や対象になる病院といった制度の中身に加えて、なぜ窓口でこれほど揉めるのか、そして患者さん側が損をしないためにどうすればいいかを、現場から書きます。

選定療養費とは:紹介状なしで大病院にかかると発生する料金

選定療養費は、紹介状なしで大きな病院を受診したときにかかる、保険がきかない特別料金です。診察代とは別に、全額自己負担で払うことになります。

目的は「病院の役割分担」です。軽い症状は近くの診療所へ、専門的な治療が必要な人は大病院へ——という流れをつくるための仕組みです。

金額(法律で決められた最低額)

区分最低額(税込)
初診(医科)7,000円以上
再診(医科)3,000円以上
初診(歯科)5,000円以上
再診(歯科)1,900円以上

これはあくまで「最低額」です。病院がこれ以上の金額を設定することができるので、大学病院では1万円を超えるところもあります。

初診の医科は、2022年10月に5,000円以上から7,000円以上に引き上げられました。「前に行ったときは5,000円だった」という記憶のまま来られる方も、まだいらっしゃいます。

対象になる病院は3種類

  • 特定機能病院(主に大学病院)
  • 地域医療支援病院(一般病床200床以上)
  • 紹介受診重点医療機関(一般病床200床以上)

条件は「一般病床が200床以上」です。療養病床や精神病床は数に入りません。「大きい病院だから必ずかかる」わけでも、「200床あれば必ずかかる」わけでもないので、受診前にその病院に確認するのが確実です。

かからないケース

紹介状がなくても、次のような場合は徴収されません。

  • 救急車で搬送された
  • 緊急でやむを得ない事情がある
  • 公費負担医療の対象である
  • 健診の結果で受診を指示された
  • 同じ病院の中で、他の診療科から紹介された
  • 病院が個別に判断して対象外とした

救急車で来られた方から徴収することはありません。ここは迷う余地がないので、窓口でも判断しやすい部分でした。

【現場】なぜ、これほど揉めるのか

ここからが本題です。

選定療養費は、私が担当していた中で最も揉めやすい業務のひとつでした。制度が複雑だからではありません。患者さんが知らないまま来てしまうからです。

再診の受付機を通れないようにしていた

いちばん多いのが、「久しぶりに来たら初診扱いになっていた」というパターンです。

そこで私のいた病院では、数か月来院がない患者さんは再診受付機を通れないようにシステムを設定していました。機械で止めて、必ず初診窓口に来ていただく仕組みです。

患者さんからすれば「いつもの機械が使えない」状態になります。そこで初めて説明を聞くことになるので、この時点ですでに驚かれているわけです。

説明してサインをもらう。それでも会計で揉める

窓口では制度を説明し、患者さんに同意のサインをいただいてから診察に進んでいただいていました。

それでも、最後の会計でまた揉めることがありました。

サインをいただいているので、こちらとしては説明済みです。それでも実際に金額を目にすると、話が違うと感じる方がいらっしゃいます。受付のときは「診てもらえるだろうか」という不安のほうが大きくて、金額の話が頭に入っていないのだと思います。

これは患者さんが悪いわけでも、事務が悪いわけでもありません。体調が悪くて来ている人に、お金の説明を理解してもらうこと自体が難しい——それが正直な実感です。

「初診」かどうかは、事務だけでは決められません

ここは、あまり知られていない部分だと思います。

医師が「これは再診」と判断すれば、選定療養費はかかりません。事務が受付の情報だけで機械的に決めているわけではないんです。

典型的なのが、計画的に間隔をあけて来ている患者さんです。

たとえば脳外科で、「経過を見るので1年に1回CTを撮りましょう」と言われている方。受付の記録上は1年ぶりの来院なので、そのままだと初診に見えます。

でも実際は、医師の指示による継続的な管理です。こういうケースは医師に確認したうえで判断していました。

ですから患者さん側も、「先生から1年後に来るように言われています」と伝えることには意味があります。黙っていると、記録の上では久しぶりの受診としてしか見えません。

医療事務として働く方に伝えたいのは、迷ったら自分で決めずに医師に確認するということです。ここを事務判断で押し切ると、あとで揉めます。

払わずに済ませるには、紹介状をもらうこと

患者さん側の対策は、結局のところひとつです。

近くの診療所を先に受診して、紹介状(診療情報提供書)を書いてもらう。

紹介状の作成にも費用はかかりますが、保険がきくので自己負担は数百円程度です。7,000円以上を払うのと比べれば、はるかに安く済みます。

そして金額以上に大きいのが、これまでの経過が伝わることです。紹介状には、それまでの検査結果や治療の内容が書かれています。大病院で一から検査をやり直さずに済むので、結果的に時間もお金も節約になります。

「大きい病院のほうが安心だから」と直接来られる方は多いのですが、紹介状を持って来られた方のほうが、話が早く進んでいたというのが窓口から見た実感です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 何年も前にかかった病院なら、再診になりますか?

A. 期間が空いていると、初診として扱われることがあります。ただし前述のとおり、医師の指示で間隔をあけて通っている場合は別です。判断は病院や状況によって変わるので、受診前に電話で確認するのがいちばん確実です。

Q2. 救急車で行けばかからないのですか?

A. 救急搬送された場合は徴収されません。ただしそれを目的に救急車を呼ぶのは絶対にやめてください。本当に必要な人のところへ向かえなくなります。

Q3. 同じ病院の別の科にかかるときもかかりますか?

A. 院内の他科から紹介された場合は対象外です。自分の判断で別の科を受診する場合は、病院の運用によって扱いが変わります。

Q4. 納得できないときはどうすればいいですか?

A. 選定療養費は制度として定められたものなので、窓口の判断で免除することはできません。

窓口にいた立場から言うと、強く言われても金額を変えることはできません。もし判断に疑問があるなら、「医師から次回の指示を受けていた」など、再診と判断される材料がないかを伝えるほうが、結果につながります。

まとめ

  • 紹介状なしで大病院にかかると初診7,000円以上(医科・税込)の特別料金。大学病院では1万円超も
  • 対象は特定機能病院/一般病床200床以上の地域医療支援病院・紹介受診重点医療機関
  • 救急搬送、公費負担医療、院内他科からの紹介などは対象外
  • 「初診」かどうかは事務だけでは決められない。医師が再診と判断すればかからない
  • 「1年に1回来るよう言われている」なら、受付でそう伝える
  • いちばんの対策は近くの診療所で紹介状をもらうこと。数百円で済み、経過も伝わる

窓口でいちばん揉めた説明でしたが、ほとんどは「知らなかった」ことが原因でした。知っていれば、紹介状を用意してから行くという選択ができます。

この記事が、その「知っていれば」の一助になればうれしいです。

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※本記事は2026年8月時点の情報です。金額や運用は病院ごとに異なり、制度改正で変わることもあります。実際の金額は受診予定の医療機関にご確認ください。

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