「障害年金って、私でも申請できるんでしょうか?」病院の窓口や文書受付で、患者さんやご家族からこう相談されることは少なくありません。障害年金は、病気やケガで生活や仕事が制限されるようになったときに受け取れる公的年金で、現役世代でも受給できる心強い制度です。今回はFP資格を持つ元大学病院の医療事務スタッフが、22年間の現場経験を交えながら、障害年金の仕組み・金額・申請の流れをわかりやすく解説します。
障害年金とは?2つの種類がある
障害年金には大きく分けて「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があります。どちらに該当するかは、その障害の原因となった病気やケガで初めて医療機関を受診した日(初診日)に、どの年金制度に加入していたかで決まります。
- 障害基礎年金:初診日に国民年金に加入していた方(自営業・専業主婦(夫)・学生など)。等級は1級・2級
- 障害厚生年金:初診日に厚生年金に加入していた方(会社員・公務員など)。等級は1級〜3級で、3級より軽い場合も一時金(障害手当金)の対象になることがあります
対象になるのは、目や耳、手足の障害だけではありません。うつ病や統合失調症などの精神疾患、がん、糖尿病、心疾患、腎不全(人工透析)など、内部疾患も含めた幅広い病気・ケガが対象です。実際、現在の受給者では精神疾患・知的障害が最も多くを占めています。
いくらもらえる?(2026年度の金額)
| 種類・等級 | 年額(2026年度) |
|---|---|
| 障害基礎年金 1級 | 1,059,125円(月額約88,000円) |
| 障害基礎年金 2級 | 847,300円(月額約70,000円) |
| 障害厚生年金 1級 | 報酬比例の年金額×1.25+障害基礎年金1級 |
| 障害厚生年金 2級 | 報酬比例の年金額+障害基礎年金2級 |
| 障害厚生年金 3級 | 報酬比例の年金額(最低保障635,500円) |
さらに、18歳年度末までの子ども(障害のある子は20歳未満)がいる場合は、障害基礎年金に子の加算(1人目・2人目は各243,800円、3人目以降は各81,300円)が、障害厚生年金1級・2級には配偶者の加給年金(243,800円)が上乗せされる場合があります。なお、これらの金額は毎年度見直されます。
意外と知られていませんが、障害年金は非課税です。老齢年金と違って所得税・住民税がかからないという点も、生活設計のうえでは大きなポイントです。
申請のカギは「初診日」――医療事務の現場から伝えたいこと
障害年金の申請で最も重要なのが初診日の証明です。初診日がいつかによって、障害基礎年金か障害厚生年金かが決まり、保険料の納付要件を満たしているかの判定基準日にもなります。原則として、障害の状態が認定されるのは初診日から1年6ヶ月を経過した日(障害認定日)です。
初診の医療機関と現在の医療機関が違う場合には、初診の病院で「受診状況等証明書」という書類を発行してもらう必要があります。私が大学病院の文書窓口で受け付けていた経験から言うと、ここでつまずく方が本当に多いんです。「10年以上前の初診で、カルテが残っているかわからない」というケースは珍しくありません。カルテの法定保存期間は5年のため、時間が経つほど証明は難しくなります。
私のいた病院では紙カルテから電子カルテへの移行を経験しましたが、移行前の古いカルテは別の場所に保管されているため、何十年も来院していない方が初診日の確認に来られると、カルテの取り寄せだけでも時間がかかっていました。障害年金の申請を少しでも考えているなら、初診の記録の確認は早めに動くことを強くおすすめします。
また、申請には年金専用の様式の診断書(障害の種類によって様式が分かれています)が必要です。私のいた大学病院では、文書窓口に依頼してから出来上がりまで3週間〜1ヶ月ほどかかっていました。申請スケジュールを立てるときは、この作成期間も見込んでおきましょう。診断書の文書料は自費(病院ごとに数千円〜1万円程度)になることも、あらかじめ知っておくと慌てずに済みます。
申請の流れ
- 年金事務所または市区町村の年金窓口で相談(初診日・納付要件の確認)
- 受診状況等証明書(初診の証明)を初診の医療機関で取得
- 年金用の診断書を現在の主治医に依頼
- 病歴・就労状況等申立書を自分で作成
- 年金請求書と合わせて提出→審査(結果まで3ヶ月程度)
書類が多く、ご本人だけで進めるのが難しい場合は、年金事務所での相談に加えて、障害年金を専門とする社会保険労務士に依頼するという選択肢もあります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 働いていても障害年金はもらえますか?
働きながら受給している方はたくさんいます。ただし、特に精神疾患では就労状況が等級判定の考慮要素になるため、「働けている=不支給」ではないものの、審査に影響する場合があります。
Q2. 身体障害者手帳を持っていないと申請できませんか?
障害者手帳と障害年金はまったく別の制度で、手帳がなくても申請できます。等級の基準も別々なので、「手帳は3級だから年金も3級」とはならない点に注意してください。
Q3. 昔から症状があった場合、さかのぼって請求できますか?
障害認定日時点の診断書が用意できれば、最大5年分までさかのぼって請求できる場合があります(遡及請求)。時効があるため、心当たりのある方は早めに年金事務所へ相談してください。
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まとめ
障害年金は、①初診日にどの年金に加入していたかで種類が決まる、②精神疾患や内部疾患も対象、③申請のカギは初診日の証明、④非課税で受け取れる、という4点を押さえておきたい制度です。病気やケガで将来に不安を感じたとき、「そういえば障害年金という制度があった」と思い出せるだけでも、選択肢は大きく広がります。窓口で働く医療事務の方にとっても、文書受付で必ず関わる制度なので、全体像を知っておくと患者さんへの案内がぐっとスムーズになるはずです。
※本記事の年金額等は2026年7月時点(2026年度)の情報です。金額は毎年度見直されるため、最新の情報は日本年金機構のホームページ等でご確認ください。


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